「SPRIT(霍元甲)」をもってアクションを封印すると宣言
(その後「ドラゴン・キングダム」の際に一旦撤回)した
ジェット・リーの、本格的な非アクション映画。本作に
おいて、彼は自閉症のまま成人した息子を持つ、
シングルファザーを演じている。
舞台は中国大陸であり、良く言えば落ち着いた、
悪く言えば色褪せた、そんな色合いの雰囲気の中、
福祉記録フィルムのように淡々と、親子の生活の
様子が描き出される。とかく重く、暗くなりがちな
題材ではあるが、「グラン・ブルー」を思わせる
美しい映像が、それを軟らかく見せている。
青を基調とした画面は、北野武映画のようでもあり、
海を彼岸と此岸の境目とする隠喩も、同様に匂わされて
いる。音楽担当者の名前を見て、思わずにんまりとした。
封切り初日の夕方に観たのだが、客入りは4割程度であった。
時折軽い笑いが漏れるような空気の中、淡々と映画は進み、
そして終わった。どんでん返しや作為的な感動話、お涙
ちょうだいを期待していると、「えっ、これで終わりなの」と
肩透かしを喰らうかもしれない。しかし私の場合は、
観終わって時間を置いてから、劇中でジェットが成し遂げた
ことが、あたたかく思い起こされた。
今回ジェットが演じた役は、正直に言って、他にも演じられる
俳優が沢山いるかもしれない。しかしながら、そうだった場合、
私が劇場に足を運ぶことは無かっただろう。その意味でも、
本作にジェットが出演している意義は充分に大きい。ただ、
グイ・ルンメイもお目当てだったことは、先に告白しておくが。
彼女も、色々な意味で画面に彩を添える役割を担っていた。
なお、本作の主題歌はジェイ・チョウによるもので、何となく
「言えない秘密」のときのようなケミストリーの可能性も感じられた。
黄飛鴻、張三豊、霍元甲など、(架空とされる人物も含めて)
歴史上の英雄を演じてきたジェットだが、本作においても、
無名で平凡ながら、やはり「英雄」なのだと思った。
この作品、ジェット・リーで本当に良かった!